判決の分解 (大阪高裁 昭和34年9月3日)  民集(第15巻8号2059-2063頁)

 

夫婦別産制

 

事案の概要

X(上告人・控訴人・原告)は、昭和32年分所得税の確定申告をなすにあたり、X名義で取得した同年中の総所得中、給与所得と事業所得は妻Aの家事労働等による協力により得られた所得であるから、夫婦に平分して帰属すべきものであると考え、右所得を均分し、これに配当所得を加えた額を総所得額として確定申告をした(Aも同じく右所得の二分の一を所得として確定申告)。ところが、所轄税務署長は、これを無視し、全額をXの総所得金額とする更正処分をした。XはY(大阪国税局長、被上告人・被控訴人・被告)に審査請求をしたがYは、これを棄却。

 

判旨

 

「民法第762条第1項によると夫が婚姻中その名で得た財産は夫の特有財産となるものであるところ、右312,400円の所得も控訴人がその名で得たものであることは控訴人が自ら主張するところであるから、前記民法の規定に従えば右所得は控訴人の所得となすべきこと明らかであり。」

 

「而して所得税は所得のある居住者(所得税法第1条の居住者をいう)につきその所得の全部に対し課するものであること所得税法の明定するところである」

 

民法

(夫婦間における財産の帰属)

第七百六十二条  夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。

 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

 

「憲法第24条において『婚姻は夫婦が平等の権利を有することを基本として相互の協力により維持されなければならない』『婚姻に関しては法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない。』と規定してるのは

 

憲法第24条の制度趣旨

・男女の両性が本質的に平等であるが故にその間に法律上何らの差異を設けることを禁じ

・婚姻においても夫と妻が法律上平等の権利を享受すべきものであって

・夫たり妻たるの故をもって、その権利に差異を附けることを禁じる

 

・夫と妻が常に同一の権利を有すべきことを定めた趣旨ではない。

 

判断

 

「民法第762条において夫婦の一方が自己の名で取得した財産はその特有財産とする旨を規定しているのは憲法の規定に違反するものではない。」

 

⇒「自己の名で取得」

「夫たり妻たるの故をもって、その権利に差異を附けることを禁じる」

「夫と妻が常に同一の権利を有すべきことを定めた趣旨ではない。」

 →「夫が自己の名で取得」したのであるから「妻である」という

   事実を以て、同一の権利(財産権)を有する訳ではない。

 

 

 

憲法

第二十四条  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。 

 

判断

 

「所論は要するに夫婦の道婚姻の倫理を説くものであって、これがため直ちに法律上

夫または妻がその名で取得した所得の半分を他の配偶者の所得としなければならない筋合いのものではない」