判決の分解(東京地裁 昭和62年12月15日)  税務訴訟資料 第203号 2419-2447頁

 

脱税協力金の損金該当性

 

事案の概要

被告人㈱X(X社)は、知人に架空の見積書、請求書を提出させ、これに基づき架空の造成費を計上して土地の仕入価格を水増したうえ、その知人に対して協力手数料として1,900万円(本件手数料)を支払っていた。本件は、この手数料が法人税法上の損金に該当するかが、争われた、法人税法違反被告事件。

 

判旨

 

『法人税法22条3項は「損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする」

  1. 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
  2. 前項に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(中略)の額
  3. 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの』

 

『同条4項は、「前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」と規定している。』

 

 「前項各号」とは・・

  1. 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
  2. 前項に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(中略)の額
  3. 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

 

「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算されるもの。とは・・

別段の定めがあるもの  『一般に行われている企業会計の原則や慣行について、税法独自の見地からこれに修正を加えるべきものは、「別段の定め」を設ける』

別段の定めがないもの     『一般に客観的・常識的に見て規範性をもっと認められる会計処理の基準というものが存在する限り、それに従って計算するという従来からの税法の基本的態度を明らかにしたもの』したがって『税法が独自の所得計算を放棄したものでもない』

『一般に行われている会計処理基準をすべてそのまま法人税法が容認するものではなく』

『大蔵省所管の企業会計審議会が公表している「企業会計原則」がそのまますべて法人税法において課税所得計算の基礎として規範化されたと考えるのは正当ではない。』

判断

本件支払手数料(所謂脱税経費)は会計処理上、土地造成費として販売用土地の仕入れ原価を構成するものとしているが  

  1. 法人税法第22条3項第1号の原価に含まれないことは多言を要しない
  2. 法人税法第22条3項第2号の費用に含まれない

      『同項第2号の費用とは、事業活動との直接的関連性を有し、事業遂行上必要なものに限られるべきであるから、本件手数料のように事業遂行上必要とはいえないものは、右費用に含まれないものと言わなければならない。』

 『そもそも法人税法は、我が国法人税に関する基本法であって、法人税に関するすべての納税義務者が、同法の定めるところに従って誠実に納税義務を履行するよう期待し、不正行為によって法人税を免れる行為を刑罰を以て禁喝しているのであるから、法人税法は、右不正行為を行うこと及びこれにからむ費用を支出すること自体を禁止していると解すべく、しがって、法人が右のような費用を支出しても、法人の費用としては容認しない態度を明らかにしていると解すべきである。』

  3.法人税法第22条3項第3号の損失に含まれない。 

  『損失とは企業会計上は一般に企業活動において、通常の活動とは無関係に発生する臨時的ないしは予測困難な原因に基づき発生する純資産  の減少を言うものと解され、固定資産除却損、火災損失、風水害損失、盗難損失の如きものを指称するものとされているが、本件における右手数料の如く実質上脱税協報酬として法人外に流出した金員の如きは、右の通常の意味における損失には含まれないものと解される』

 

 

法人税法

 

   第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則

(各事業年度の所得の金額の計算)

第二十二条  内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項 (中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しを

いう。