判決の分解(東京高裁 昭和63年11月28日)  判例時報 No1309  148 -152頁

 

脱税協力金の損金該当性

 

事案の概要

被告人㈱X(X社)は、知人に架空の見積書、請求書を提出させ、これに基づき架空の造成費を計上して土地の仕入価格を水増したうえ、その知人に対して協力手数料として11,900万円(本件手数料)を支払っていた。本件は、この手数料が法人税法上の損金に該当するかが、争われた、法人税法違反被告事件。

 

判旨

 

『確かに法人税法は、その22条1項において、「内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。」と規定している。

→ 所得の「額」の話。

 

更に、『同条3項において、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの 」と規定する』だけで

→ 損金の「額」の話。

 

『右にいう損金の意義について、定義規定ないし一般的規定を設けることなく

個々の事項につき、同法23条以下において、

ある事項については損金に算入し、ある事項については損金に算入しない旨規定しているに過ぎないので、本件手数料のような違法支出について、法人の所得計算上、これを損金の額に算入できるか否かは必ずしも明らかではない。』

→ 法人税法22条1項3項では 「損金」についての「定義規定・一般規定」を述べていない。

→ 「損金」該当性については、個別に、法23条以下で検討する。

→ 「損金」の「定義規定・一般規定」がない以上、「違法支出について、法人所得の計算上、損金算入できるかどうかは、明白ではない。

 

『したがって、具体的にいかなるものを損金と認めるかは、単に損金の性質論だけでな

く、同法22条4項に規定されている公正妥当な会計処理基準(もっとも、何をもって公正

妥当な会計処理基準といい得るかが問題であり、商法、税法、会計学等それぞれの立場が

あって、一般には決し難いけれども、差し当たり企業会計の実務において慣習として発生

したものの中から、一般に公正妥当と認められるところを要約し、証券取引法に基づく財

務諸表の監査においても、その公正妥当な基準として実質的に機能している企業会計原則

を中心にして、種々の事例ごとに判断すべきであろう。)など、法人税法の各規定に現れた

政策的、技術的配慮をも十分検討して、これを決すべきものと考える。』

→ 損金の決定 については

→ 「損金の性質論」

→ 法人税法の各規定中の(政策的、技術的配慮)(例 法22条4項)

→ を 十分検討する必要がある。

 

『ところで、右にいう損金とは、一般的には法人の純資産の減少を来すべき損失を指すも

のと解されており、』そして

『同法22条3項各号に規定されている原価、費用及び損失が当たることは明らかである』

『純資産の減少を来す損失の総てが当然に法人の所得金額の計算上、その損金の額に算入

されるものと解すべきではない。』

 

→ 損金とは、一般に、法人の純資産を減少させる損失

→ 例示 原価、費用、損失

→ 純資産を減少させる損失すべてが、損金算入できるわけではない。

 

判断

 

一般に、『同法22条3項1号の原価とは、その事業年度の益金に算入された収益に対応す

る原価』をいい

『同項2号の費用とは、収益と個別に対応させることの困難ないわば期間費用であって、

事業活動と直接関連性を有し、事業遂行上必要な費用』をいい

『同項3号の損失とは、火災、風水害、盗難など、企業の通常の活動と無関係に発生する

臨時的ないし予測困難な外的要因から生ずる純資産の減少を来す損失をいう』

→この支出は

→1号の原価に非該当

→2号の費用に非該当

→3号の損失に非該当

→その他これを損金に算入する合理的理由は見つけ難い。

 

 

すなわち、法人税法は、

『納税義務者が同法の定めに従い、正規に算出された税額を確実に納入することを期

待し、これを実現すべく、偽りその他不正な行為により、これを免れようとする者

に対し、刑罰をもつて臨み、納税者相互間における税の均衡を図つているのである』

 

から、『本件手数料のような違法支出を法人の所得計算上、損金の額に算入すること

を許すと、脱税を助長させるとともに、』

 

『その納税者に対し、それだけ税の負担を軽減させることになる反面、その軽減させた部

分の負担を国に帰せしめることになるのであつて、国においてこれを甘受しなければなら

ない合理的な理由は全く認められない』上、

 

『刑罰を設けて脱税行為を禁遇している法人税法の立法趣旨にも悖る』

ので、

『実質的には同法違反の共犯者間における利益分配に相当する本件違法支出につ

き、その損金計上を禁止した明文の規定がないという一事から、その算入を肯認す

ることは法人税法の自己否定であつて、同法がこれを容認しているものとは到底解

されない。』

『もし、違法支出に係る本件手数料を損金に算入するという会計慣行が存するとすれば、

それは公正妥当な会計慣行とはいえないというべきである。』

 

 以上のとおり、被告会社BがCに支払つた手数料は、その所得の計算上、これを

損金の額に算入することはできないのであつて、これと同旨の前提に立ち、被告会

社Bにおける本件事業年度の所得額を認定した原判決には、法人税法二二条三、四

項及び三八条二項の解釈の誤りは勿論、所論のような事実の誤認もないから、論旨

は採用することができない。

 

 

 

 

 

 

 

 

法人税法

 

   第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則

(各事業年度の所得の金額の計算)

第二十二条  内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。

 当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額

 前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額

 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

 第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

 第二項又は第三項に規定する資本等取引とは、法人の資本金等の額の増加又は減少を生ずる取引並びに法人が行う利益又は剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第百十五条第一項 (中間配当)に規定する金銭の分配を含む。)及び残余財産の分配又は引渡しを

いう。